誰も彼もやまびこじゃない

夜、雨が降ったのか随分涼しい朝だ。部屋のなかより外のほうが涼しくて、部屋を冷やすためにエアコンを稼働させているのはばかみたいだなと思う。冬になったらどうなるだろうか、まだわからない。

引っ越して一ヶ月が経過し、だいたい生活のリズムができてきた。部屋はがらんとしていても最低限生活していくための基盤も整ったと思う。自分の気持ちも驚くほど落ち着いて、引っ越すまでのつらさはどこかにいってしまった。一人きりで静かだし、早寝早起きをしていることも関係しているかもしれない。浮き沈みする気持ちの波を考えると、いまは低空飛行の時期ではあるんだけれど、それでもだいぶ元気だなと思う。

低空飛行の時期になると過ぎたことが思い出されて、にわかにつらい気持ちになることが常で、だけど今回はなんとなく線引きがうまくいっている。誰を責めるわけでも、自分を責めるわけでもなく。

ただ絶対に手に入れようがない線の先については少し考えてしまった。人はそれぞれ経験が異なるし、事実を知ったり感情の部分は共有はできても、自分の体験になるわけではなく、どこまでも他者のもので、そのことをわたしはどれだけ意識してきただろう。「共感」し、「理解を示」したとて、どこまでわかっていただろうか。

わたしは常にやまびこのようなもので、空虚に、やっほーにやっほーと返してきただけかもしれないな、とか。

それでもいいんだ、やっほーってみんな言ってほしいんだよって声もありそうだけど、やっほーって返し続けるのにも限界が合って、やっほーじゃない声もときには返したいし、あるいはじっと黙って聞くこともしたい。