鈍い動きで問題ありません

今年は春から夏にかけてしんどい気分が続いて、またしばらく薬を飲んでいたけれど、安定してきたので最近はとんと飲んでいない。病院に行き、話すことは話し、もらうものはもらっているけれど、「元気でないときだけ飲むんでいいからね」という先生の言葉のままに、本当にしんどいときだけにしている。

以前より調子は良いのかもしれない。すくなくとも存在が耐えられないような気分のときはない。どうしてそうなのかといえば、結果としてやることが減っているからではないからかなあ、と思う。

最近といえば何を作るでも学ぶでもなく、そばにあったものを片っ端から手放して、とにかくぼんやりしている。積極的に外に出るわけでもなく、人に会うわけでもない。日々仕事はしているけれど、それもあんまり無理していない。パニックになりそうなときには、周りの冷静な人に助けてもらっている（まだ慣れない）。

ずっと何者かになりたかったし、何かを成し遂げたかった。とにかくなにかにならなければならなかった。それで走って走って走って倒れたあと、体調を戻すのに数年かかった。いったいわたしはなんになりたかったんだろう、と今も思い、なんにもなれなかったな、とつらい気持ちにもなる。でもふと、そもそもその考え方がつらさの原因だったのではないか、とも思った。

なにかにならなければ、と思うから、下手な詩も文章も、土をこねることも、どれもなんにもならなかったなあ、という結論になってしまう。楽しみとしてさえ残らなかった、と思ってしまう。でもそもそもの部分を削ると、ひとときでもそれを楽しんでいたんだな、という思い出になるし、なんにもならなくても別に生きていてもいいのか、となる。こういうのはごまかしなのかもしれないけれど、それでも決定的に変わってしまった自分を抱えつつ、どうしたらつらくないか考えたり、つらくない状態にもっていくことは別にわるいことじゃない。

強い怒りも、悲しみも、抱えていることができず、全部流してしまって、虚しかったり、たのしいと思っていたものをそばにおけないのは、やっぱりさみしい。それは本当なのだけれど「なにものにもなれなかった」は、もういいよね、と思うとき、少なくともいまこうして在りつづけていることはえらいぞ、とほめてあげたい。