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雑多な日記

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 いわたにくん、お元気ですか?
 あなたがいなくなってしまってからもう何年たつでしょう。3年? 4年かな。わけてもらったマグノリアのお香はすっかり匂いが抜けちゃったよ。1本だけ火をつけたことがある。でもそのときももう香りは薄くなってたように思います。
 今日ひさしぶりにいっちゃんの撮ったあなたの写真を見ました。すごく良い顔で笑ってた。かわいかった。あの頃、わたしはあなたの話をいっちゃんから聞くばかりで、きっと話せることはたくさんあったはずなのに、なぜか話しかけられずにいました。目をきゅって細くして笑っている顔だけは覚えているけれど、あなたの笑顔がどんなにかわいらしいものだったか、ってこと、今更気付いたんです。
 あの年の大晦日、中学時代の友人に会いました。幼馴染にも会いました。お酒を飲んでカラオケにいって、男友達の歌を聞いていたら突然、むしょうに悲しくなった。わたしがこうしていて、あなたがこちら側にいないのは何故だろうと繰り返し思った。わたしには聞けるはずの話があったかもしれない、かけられる言葉があったかもしれないと何度も思いました。
 時々こうやってあなたのことを思い出します。それはその人がそばにきているからだと聞きました。この空気に溶けてあなたはいるのかもしれないね。
 あなたのことをかわいいと思いました。それを伝えたくて書いています。聞こえてるかな。
 わたしは相変わらずです。なんでもないことに泣いて、なんでもないことに笑ってます。前ほど背伸びしなくなりました。ちょっとずつ、仲の良い人の前では、もともとの(末っ子だからね)子供みたいな振る舞いができるようになりました。周りの人は大変です。でも生きるのが少しだけ楽になりました。
 あの日の、キンと凍るような冬の空と、みかん畑と、山を登る自分の息遣いと、長い長い東海道線をわたしはずっと忘れないと思います。悲しい、という気持ちはもうないのです。不思議です。話せないことを惜しいと思うのに。毎日生活してると、こうやって話したいことが増えていきます。
 いつかどこかで会えたら、そのときには直接、今日思ったことを伝えられたらと思います。
 またお手紙書きます。それでは。