生活🐌の記録

いるようでいない、いないようでいる

140710 #BL読みノック 4首目

錐・蠍・旱・雁・掬摸・檻・囮・森・橇・二人・鎖・百合・塵(塚本邦雄) 

 「きり・さそり・ひでり・かり・すり・おり・おとり・もり・そり・ふたり・くさり・ゆり・ちり」

読み方はこれであっているだろうか。「り」の音がつぎつぎにせまってくる。言葉遊びをしているだけにも思うのだけれど、「り」の音が絶えず響くことでイメージが補強され、鉱物ような硬質な音で景色が作られる。これがもしひらがなだったらもっとゆったり、糸が紡がれるように響くのでは、とも思うのだけれど、それでも「り」の空間を裂いて響く音のほうが強いかもしれない。

この歌の前提はわからない。わからないけれど、厳しい状況におかれた二人がどううつりかわっていったか、読み取ることができる、と思う。自然と地続きの厳しい生活環境のなか、「二人」がどうなっていったか。悪とひとには呼ばれるような何か、そういったものにも身を沈めながら、二人は逃げて逃げて最後の瞬間を迎えるのではないか(それは死ではなく、だれもいない、だれもたどり着けない場所に二人で到達するような)。

南から北へ北へ逃げる、わたしはそういうイメージで読んだ。短歌ってちょっと映画みたいですね。これを語っている主体が映画を見ていてもよいな、とも思う。