生活🐌の記録

いるようでいない、いないようでいる

神様2011

神様 2011
「神様」は川上弘美さんのデビュー作。主人公の住むアパートに引っ越してきたくまとともに川原へでかけるという、ほのぼのとした短編小説である。穏やかな物語の運びと川上さん特有のやわらかな文体が読んでいて心地の良い小説だ。
そしてこの「神様2011」。
これは「神様」を「あのこと」以降と想定して書き直されたものである。あらすじはまったくもって同じ。違うのは「あのこと」があるか、ないか。それだけだ。それだけなのに日常は大きく変わってしまっている。書き出しはこう。

くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである。歩いて二十分ほどのところにある川原である。春先に、鴫を観るために、防護服をつけて行ったことはあったが、暑い季節にこうしてふつうの服を着て肌を出し、弁当まで持っていくのは、「あのこと」以来、初めてである。散歩というよりハイキングといったほうがいいかもしれない。

日常が、福島での原発事故をうけてどう変わってしまったか。この本で描かれているのは空想ではなく、現実だ。すでに起こってしまったこと、それから再び起こるかもしれないこと。

考えています。