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雑多な日記

連作30首 201312

ぼくたちは陳列されている

とうめいになるまで磨かれた靴を奪う店主は北国にいる

流氷のみずうみあかいゆびさきを冬が隠すよ ほら、渡り鳥

思うままひっくり返す粉雪の舞うつれづれに刺さるプリズム

心臓はあげられないの手のうつわからこぼれくる他者の心音

羽ばたきはいつも窓辺に落ちる風 影にまぎれてまばたきをする

いくつものやくそくである緞帳が切り刻まれるゆめ黄昏の

革命は眠らぬ夜に起こるもの瞼をとじぬ救世主らは

ピノキオが生まれたときも流星は絶えず叫んだいのちの群れだ

きみのいま、きみたちのいま立つ地平 指差している終のともだち

とおくとおく空の果てからきこえくる千年前の笑みの残響

花々をよけてあるいていたきみの鼓膜にそっと触れてみている

花の香の去りゆくすがた緞帳はかならずあがる顔は見えない

天蓋のはしを見ていてこの部屋で星の生まれた痕を探して

結晶となる涙にはぼくたちの知らぬ名札がつけられてゆく

あしうらのこおりはとけてしまったね水底の虹 鱗が降るよ

射しこんできて天国にかけあがる金木犀はちらちら積もる

さあさあと途切れない雨かみさまのところへわたる舟はながれて

ひとすじの埃を払う少年の碧き眼と会うぼくの脱け殻

「CLOSED」、揺れぬドアベル、窓枠に再生されるめぐりくるもの

かつてぼくらもそこにいました朝がきて鶏が鳴く灰の降る町

踏みしめる感触はないモノクロの足跡だけが鮮明にある

宝石はぼろぼろ落ちるだれひとりいらないという(ぼくもいらない)

火の雨はもう止んだのかくろぐろと眠る大蛇に浮くさかなたち

真四角の棺に横たわっていた子守りの歌は途切れたままだ

煤だらけの人形を抱く星の子の手をひいてゆく行き先もなく

均等に並び眺めた羽ばたきが遠ざかりゆく雪の平野に

静けさの底に佇む火の粉らがきかせてくれる鎮魂のうた

この国は冬になります影だけの枝にさいごの声が積もれば

並べられ切り刻まれていたことも、大樹の洞で思いだすこと

帰ろうか帰りたいよね(もうないか)ぼくらは眠る春のあしおと